シャクルトンに消された男たち
シャクルトンが南氷洋の真ん中で氷に船を押しつぶされたのに、2年かけて波乱万丈の大冒険の末、全員生還に成功させたのは爽快だ。エンデュアランス号漂流。このシャクルトンの当初の計画は、南極大陸を初横断しようというもので、そのために、反対側から別働隊が上陸し、点々と補給所を設けておくことになっていた。この本は、その南極大陸の反対側の補給隊の話である。
隊長シャクルトンがチリに入った頃、補給隊の方はオーストラリアに着いてみると、装備が全然揃っておらず、ロンドンにいくら言っても資金はなかなか出ないまま、さんざん苦労して、ありあわせの装備で見切り発車してしまった。これ以上遅れると夏が終わってしまう。探検隊が予定通り南極大陸を横断して補給所に到達してしまったら、そこに燃料と食料がなければ全滅してしまう。焦って、混乱のうちに輸送を始めてしまったが、訓練不足で連れ出したそり犬が壊滅状態になってしまうなど、失敗を重ね、危険な冬に突入した中、ぼろぼろになって海岸に帰り着くと、船がいない。自ら南極に取り残されつつ、補給隊の10人は、シャクルトンのために次の夏を待ちかねるように補給を再開する。が、1年目の損失が大きい中、超人的な努力によって、2年目に見事に任務を完遂したものの、3人が命を落とす。しかも、なんとか海岸に帰り着くと、船が戻った形跡がない。大陸の反対側から来るはずのシャクルトンの動静も不明のまま。かくして、過去の探検隊のストックを食いつなぎつつ、2回目の越冬。
実は、最初のシーズンは、準備の遅れでシャクルトンの側は早々にアタックの見送りを決定していたのだが、補給隊の方には連絡がされていなかった。2年目も、シャクルトンは南極大陸を踏むこともできずに、南極海上の氷の上でただ流されていただけだったので、結論的には、3人の命と引き換えに補給基地に運び込んだ膨大な物資が日の目を見ることはなかった。
一人の偉大な精神に振り回されるのは、エイハブ船長に引きずられてついに白鯨に打ち倒された船員たちに通ずるものがある。救出された後、シャクルトンと再会すると、わだかまりはあっという間に解消されてしまうのだから、シャクルトンはやはり大したものだ。
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