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2008年8月26日 (火)

ハドリアヌス帝の回想

「ハドリアヌス帝の回想」ユルスナール

ローマ帝国5賢帝の3代目ハドリアヌスが、死に瀕して、5代目の哲人皇帝マルクスアウレリウスにしたためた、公式記録に載らないプライベートな回想録、という設定で、フランスの女流小説家が書いたものです。何しろ300ページ以上のモノローグは圧巻です。その内容は、最近の人の独白であるかのような現代的なもののように感じられますが、彼は卑弥呼よりも昔の時代の人です。でも、嘘っぽくない。事実、名宛人のマルクスアウレリウスは自省録を残しており、(実はまだ読んでいないのですが)、ラテン語の名文として、ヨーロッパ世界の古典となっていますが、それと比べても、違和感はなく、実際こういう書簡を残していてもちっともおかしくないと思います。多田智満子訳でしたが、わかりやすく、すらすら読めました。

そこに描かれているハドリアヌスの生涯とは、

属州スペインで生まれ、先代トラヤヌスの軍事拡張路線にあって軍人として頭角を現し、先代の死に際に疑惑はあるも後継者に指名され、反対派4人を粛清して地盤を固めた後、東の大国パルティアに侵攻していた軍を撤収して講和し、その後は、拡大路線を放棄して、もっぱら防衛力の強化に努め、域内を巡回して軍を引き締めました。たとえば、カレドニア人の攻撃にさらされていたブリテン島を横断する城壁を作ったりしました。

ラテン語のネイティブではなく、ギリシア語の方が達者で、ギリシア文化に傾倒して、皇帝で初めて髭を生やしました。美少年アンティノウスを溺愛し、ナイル川で変死してしまうと、嘆き悲しんで、ミイラにさせ、神殿を作らせたり、と古代人らしい一途な情熱です。

ユダヤ政策に失敗して、大反乱を誘発し、結局ユダヤ人をエルサレムから放逐することになりましたが、本人はこれを後悔しています。

晩年は、病状が悪化すると、自殺を画策するも協力が得られず、最後は泰然として死におもむく、という内容でした。

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