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2008年9月19日 (金)

「沈黙の春」レイチェル・カーソン

「沈黙の春」レイチェルカーソン(新潮文庫)

環境問題の古典にして教科書。初めて読んでみたが、なるほど鬼気迫る筆致でした。1950年代のアメリカでは、産官学一体のもとに次々と新たな化学薬品を開発しては、害虫駆除のため、膨大な量の空中散布を繰り返していましたが、本書はその問題を指摘し、最終的には政府を動かし、社会の進路を変更させることに成功しました。

何か社会問題に気付いたとしても、ある個人が、そのことを社会全体に認識させ、当事者に対策を講じさせることは、そう簡単なことではありません。産業界の利益損失や、政党の政策決定、行政の予算や計画など複雑な利害が絡まっている問題なら、なおさらです。

本書でそれに成功したのは、誰にでもわかりやすく、春に囀っていた小鳥がいなくなること、釣りに行っても魚がいなくなってしまうこと、から始まって、ペット、さらには人間にも害が及ぶことを、これでもかと具体例を挙げて説明し、さらに、天敵まで殺してしまったり、耐性を身につけたりして、費用の割に効果がないことを論証していることに加え、害虫の被害をひたすら耐え忍べ、というような原理主義に陥ることなく、代替策として、天敵の移入やフェロモンによる繁殖の妨害などの手法も紹介しつつ、農薬の使用も一切否定するということでもない現実路線の方向性を提示していることがポイントだと思います。

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