(コンサート)ブルックナー交響曲第5番
今日の日フィル定期コンサートは、ビェロフラーヴェクのブルックナー交響曲第5番でした。
CDで聞いているとまるでブラスバンドのような管楽器が鳴り響く曲なのに、編成がいたってシンプルで、木管は2管編成、トロンボーンとトランペットが3本、ホルンが4本とチューバというものだったことに気づいて、まず驚きました。
これだけ大音量鳴りっぱなしとは、ブルックナーも人使いが荒いものです。
第1楽章はとてもゆっくりしたテンポで、休止で思いっきり長くためをとって、重厚でした。遅いので、弦楽器の細かな動きの一音一音がはっきり聞こえますが、管楽器は息継ぎが長くなるのでさぞ大変なことでしょう。出だしから早くも顔が赤くなっているようです。
終楽章は、途中のフーガからフィナーレまで、息つく間もない緻密な音楽です。
ホールでじっくり聴いていると、展開部がフーガで、その後、第2主題、第1主題の順で再現してから改めて長大な盛り上がりに達しているのが分かりましたが、その間、無限に登っているような感がしました。
音の「高さ」も「大きさ」も、アコースティック楽器が出すのだから、果てしなく高く大きくなるはずはなく、時々弱く低くなっているはずで、実際なっているのですが、それでも登り続ける感じがするのは不思議です。
昔、NHKの音楽番組で、ワーグナーの音楽が緊張の連続なのはなぜかと問われて、芥川也寸志が、音楽は不安定な和音と調和の和音の移り変わりで、調和の和音になるとき緊張から解き放たれるのだけれど、ワーグナーの場合は、緊張の和音が安定の和音に移るところで次の緊張の和音が同時に始まってしまう、というのを続けるので、調和の和音で安らぎを感じる間がないから、というような趣旨のことを言っていたように思います。
この曲もその原理なのでしょうが、細かな彫刻が渦巻きながらどこまでも天高く上り続ける大聖堂の尖塔のような音楽です。
嵐の渦巻く雲の中をぐいぐい昇って行き、不意に白い雲の上に飛び出て青い空が広がる、という風な、万感こみあげながらもどことなく爽快なこの曲のフィナーレが好きなのですが、今日の演奏は最後まで緊張が途切れることがなく、そんな、登りつめた爽快感、を味わうことができました。
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