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2014年3月 4日 (火)

巻狩り(その1)

 
先日、巻き狩りの様子を見学するツアーに参加してきました。
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皆が静まって、動きを止め、耳を澄まし、目を凝らします。
風は弱く小枝もそよぎません。雪に覆われて音は消えています。
四十雀やこげらの鳴き声が時折、遠く近く聞こえます。
雲と雪との白い世界。霧が降りてきて木立がかき消され、自分の身体の感覚も薄れて、彼我の境界が曖昧に溶けていきます。

風に乗って硝煙の不吉なにおいが漂ってきます。
先ほどの遠くの銃声のあと、再び周囲から人の気配が消えます。
カケスが何かに驚いて叫び声をあげ、ウソの群れが澄んだ声を鳴き交わしながらその場を離れていきます。

遠くから勢子の声がします。追い立てるための何処か苛立たしい声です。いつの間にか近づいてきます。

曖昧な白の中から白いものが飛び出します。その瞬間、彼我は峻別され、対峙します。

白い何かは兎となり、焦ってこちらに真正面に飛ぶように向かってきます。
銃声。兎は少し角度を変えて更に走っています。
この瞬間、少しほっとしたことを覚えています。
そして2発目の銃声。兎は更に走って行き、向こうからの3発目で動かなくなりました。
近づいてみます。1発目は手前の木に当って防がれました。
2発目が致命傷らしく、点々と赤いものが雪の上に続いています。
3発目は、向こうで待つ人との配置の関係で、こちら側からは撃てない角度でしたた。間合いをとってから、向こうで待っていた銃が発砲しました。

兎は、参加者の一人に両足を握られ、耳を垂らしてぶら下げられます。しなやかに揺れてはいますが、もう動きません。
白い毛はつややかで柔らかいですが、その中の黒い目からはみるみる光が失われていきます。

Photo_2

つい先日、散歩中に飛べなくなった椋鳥を拾ったことがありました。家に連れ帰り、暖めてやり砂糖水を飲まてやろうとしているうちに死んでしまいました。
生き物の命が失われる瞬間。
兎には触る気になれませんでしたが、あのときのように為すすべもなく柔らかさと温もりとがなっていったのでしょう。

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