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2014年11月 7日 (金)

「ムーミンパパの思い出」ヤンソン、小野寺百合子訳(講談社文庫)

これは名作です。最後の一句がしびれます。
「あたらしい門のとびらがひらかれます。不可能を可能にすることもできます。あたらしい日がはじまるのです。そして、もし人がそれに反対するのでなければ、どんなことでもおこりうるのです。」
ううん、深く、広く、鋭い。
翻訳者も解説者も引用していますが、深い余韻と含蓄が読んだものをとりこにします。
そして、ムーミンパパが著した「思い出の記」の最初の一句がまた美しい。
「わたし―ムーミンパパ―は、今夜は、窓ぎわにこしかけて、まっくらな庭の黒ビロードに、ほたるが、神秘的なもようをししゅうしていくのを、じっとながめています。」
ううん、詩人だ。
エピソードの一つ一つは輝きをもち、透明で、その連なりは、真珠の首飾りのように関連しつつ、だまにならず、軽く、深い。
絵も詩情あふれています。
すばらしい。なぜ今まで読まずにいたのだろうか。死ぬ前に読めてよかった、と思える一冊です。

「もし人がそれに反対するのでなければ」どんなことでもおこりうる。

無限の可能性を狭めているのは、人の分別、というよりは、思い込みのようなもの、ということなのでしょうか。

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